まだ外が明るいな、と時間を見ると、もう夕方遅い時間だった、ということもよくあります。もう夏が近いな、と感じます。1年の内で一番昼間が長い日、夏至(げし)。夏至にするといいこと、食べるといいもの、また、ヨーロッパの夏至祭とは?夏至を詳しくみてみましょう。
夏至(げし)とは
大きな暦の節目の一つに夏至(げし)があります。夏至とは、北半球に置いて、1年で一番昼間が長く、夜が短い日になります。太陽と地球の動きによって決まります。天文学的には、難しい表現ですが、夏至は、太陽黄経が90度になる瞬間を意味しています。夏至が何日か、そして夏至を迎える瞬間が何時何分かは、毎年、国立天文台で発表される正式な暦になります。
2021年6月21日 夏至 12時32分
2022年6月21日 夏至 18時14分
夏至の期間は、6月21日から次の暦の小暑(しょうしょ)の前日7月6日までをいいます。
また逆に、1年で一番昼間が短く夜が長い日を冬至(とうじ)といいます。夏至と冬至では日照時間が4時間ほど違ってきます。
二十四節季の暦では、夏至は、立春からスタートして10番目の暦になります。地球と太陽の角度によって、毎日、日の出と日の入りの時間が数分ずつ変わっています。暦の夏至(げし)から、次第に夏の暑さが増してくる、と言われています。次の暦は小暑(しょうしょ)、大暑(たいしょ)と、段階をおって、夏の暑さが増してくる表現になります。夏至を迎えることは、これから徐々に暑くなるよ!のサインでもあります。
夏至2021いつ? 日の出 日の入り
2022年の夏至は6月21日(火)です。夏至は残念ながら、祝日には制定されていません。2021年は平日になります。夏至の日にちは太陽の動きを基準とするため、日にちは前後することがあります。これから数年は6月21日が夏至になる予定です。2023年も6月21日(水)になります。
日の出と日の入りは、地域によって異なります。南の方より北の方が、日照時間が長く、北海道と九州では日照時間が2時間ほど差があります。わたしも、同じ日本で随分と差があることに驚きましたが、これも太陽と地球の角度によるものです。
2022年6月22日 日の出 日の入り
北海道 日の出 3:55 日の入り 19:18
東京 日の出 4:25 日の入り 19:00
名古屋 日の出 4:38 日の入り 19:10
大阪 日の出 4:45 日の入り 19:14
福岡 日の出 5:09 日の入り 19:32
南の九州の方が日照時間が長そうですが、太陽と地球の角度から、北の北海道の方がずっと日照時間が長いのですね。住んでいるところから一番近い地域の時刻を参考に、日の出、日の入りを楽しまれてください。
他県の正確な日の出・日の入りの時刻を知りたいときは、国立天文台の「こよみの計算」で調べることができます。
夏至 食べるといいものは?半夏生(はんげしょう)とは?
夏至当日に、これを食べるといい!という全国共通の行事食は、実はありません。しかし、この時期の農作業の結びつきから、半夏生(はんげしょう)という暦と、御祝の食べ物を知っておくと、季節の楽しみがぐんと増します。
ちょうど夏至(6/21~7/6)の期間に、日本の風土に合わせて作られた雑節(ざっせつ)の「半夏生」(はんげしょう)があります。半夏生は、半夏(はんげ)という植物が育つ頃、という意味で名付けられ、夏至から11日後とされていましたが、今は太陽黄経が100度になる日と定められています。毎年7月2日頃前後になり、2021年の半夏生も7月2日です。それから5日間が「半夏生の期間」になります。
チュウ(夏至)ははずせ、ハンゲ(半夏生)は待つな
この諺(ことわざ)は、田植えの時期について、「夏至を過ぎてから、田植えをすること、半夏生までには終わらせること」を伝えています。半夏生までに田植えを済ませることが、農作業の大切な目安になっています。半夏生以降に田植えをすると、収穫が半分になると言われており、農家は、それまで田植えを終わらせることが必須でした。夏至に行事食がないのは、この日は田植えの準備のピークであり、行事食を作ったり、何かをするという余裕がなかった、という説が、1番有力な説のようです。
田植えの無事終了と秋の豊作を祈願する皆作(かいさく)祭りを行う、村や集落もまだあります。皆作祭りや、半夏生は「 田の神様(さ)が田植えを見届けて、天に昇る」日とされました。2021年で言うと、遅くとも7月2日には、休息日になり、豊作を祈り、御祝をしていることになります。
その御祝は、半夏生の時期を楽しむ食事や豊作を祈るもの、そして、農作業を手伝った方への振る舞いなどを意味していました。今では、夏至の期間、特に半夏生の期間に楽しむ季節の食べ物として【半夏生○○】と呼ばれ、各地域の習慣が残されています。
京都の水無月(みなづき)というお菓子は有名なので、聞いたことがある方も多いと思います。その他の地域では、大阪のタコがあります。
地域ごとに見てみましょう。
関西:タコ タコの足のように四方八方に広がって栄えるよう、豊作を祈る意味があります。しっかり根付く、という意味もあるようです。
福井県:半夏生サバ(はげっしょさば) 江戸時代に大野藩主が、農民の労の労いのためにサバを取り寄せ食べさせたと言われています。サバの丸焼きです。
京都:水無月(みなづき)という和菓子。6月30日の夏越の祭り(なごしのまつり)に1年の半分を過ごした節目に食べるそうです。
奈良県:半夏生餅(はんげしょうもち、はげっしょもち)こちらも豊作を祈り、神様に捧げたきな粉をまぶしたお団子になります。二毛作の地域では、麦の収穫後にお米の田植えになり、新麦をまぜた団子を、神様にお供えしたところから始まったと言われています。
関東地方:小麦餅(こむぎもち) こちらも収穫した麦でついたお餅を焼いたものです。五穀豊穣を祈った食べ物です。きな粉はまぶされておらず、とてもシンプルな焼き餅です。
香川県:うどん 農作業を終えた労をねぎらうために、うどんを出したことから、半夏生の時期にうどんを食べる風習が残っているそうです。香川県では半夏生の7月2日を「うどんの日」としているそうです。
この時期に旅行に行けるなら、そこの土地の季節限定「半夏生○○」を楽しんでみてもいいですね!
夏至 キャンドルナイト
世界的なイベントの一つとして、「キャンドルナイト」があります。2001年にカナダで行われた【自粛停電運動】が始まりになりました。当時のアメリカのブッシュ大統領が、2001年に「1ヵ月に1基ずつ原子力発電所を建設する」という政策を発表しました。それに反対したカナダで始まった抗議運動が、この自粛停電運動です。
日本でもこのイベントを始めてみようと、複数のNGO団体が協力し、「100万人のキャンドルナイト」が2003年からスタートしました。「でんきを消して、スローな夜を」がスローガンです。
「でんきを消して、スローな夜を」というスローガンのもと、「100万人のキャンドルナイト」が初めて行われた2003年、1回目から500万人を超える参加で、それ以降、毎年夏至と冬至に開催されています。同時に環境問題に興味のある団体やカフェなどでも、「キャンドルナイトを楽しみませんか?」というイベントで、キャンドルの灯りの中で、スローフードを楽しんだり、ピアノ演奏を聴いたり、という暗闇カフェも登場しました。
脱原発だけではなく、自然を楽しみたい嗜好が高まってきた時代とマッチしたのだと思います。このイベントは海外に飛び火し、アジア、アメリカ、ヨーロッパへと広がっていきました。
このキャンドルナイトは、それぞれの地域で、夜の8~10時です。わたしも数年前、地元の大きな雑貨屋さんで、夏至のキャンドルナイトをディジュリドゥという楽器の演奏を聴きながら過ごしたことがあります。キャンドルの薄明かりが、とても心地よかったです。ご自宅で、美味しいお茶を楽しむも良し、お風呂にキャンドルを浮かべてリラックスするもよし、映画を観るもよし、、、ゆっくりとした時間を家族で過ごしてみませんか?
日本の夏至のお祭り
日本の夏至のお祭りとして有名なのは三重県にある二見興玉神社(ふたみおきたまじんじゃ)の夏至祭です。
日本のトップの神格である三重県の伊勢神宮は、「一生に一度はお参りするところ」として全国から人が集まる神社です。こちらの神社の参拝の前に、二見興玉神社に参拝し、禊をし、それから伊勢神宮に参拝することが礼儀とされています。こちらの神社には夫婦岩があり、夏至の日には、この夫婦岩の間から日が昇ります。夏至の日に合わせ早朝から「夏至祭」の儀が開催されます。
そして、もう一つ福岡県糸島市の桜井二見ヶ浦(さくらいふたみがうら)神社。浜辺に建てられた真っ白の大きな鳥居が珍しい神社です。そして、ここにも夫婦岩が祭られています。こちらに常駐の神職の方はいらっしゃいませんが、夏至の太陽が夫婦岩の間に沈むとされていて、多くの人が集まるスポットです。
どちらも夏至のタイミングではありませんでしたが、参拝した神社です。夫婦岩が祭られていて、ソックリだなぁ~と感じたことを覚えています。夏至の日の出と日の入りで繋がっていて神秘的ですね。
世界の夏至祭
北欧では、夏至をお祝いする夏至祭が開催されます。夏が短い北欧では、太陽はとてもありがたい象徴になっています。
夏至祭 スウェーデン
夏至の期間は、夏の到来の喜び、太陽への感謝として、お祭りが開催されます。スウェーデン各地で行われ、民族衣装を着て踊ったり、花飾りを頭につけたり、多くの人で賑わいます。この時期に合わせて訪れる海外の観光客もいます。この時期に家族で休暇を取り、別荘で過ごす人も多いです。
夏至祭 フィンランド
フィンランドでも夏至は、夏の到来を意味する大切な日。祝日になっています。この日は家族や大切な人と過ごす日とされています。フィンランドの北部では緯度が高く、太陽が沈まない「白夜」がこの時期起こります。家族で休暇を楽しんだり、この時期に結婚式をあげたり、太陽の恵みを楽しむ時期にされています。
太陽の恵みが人間も、生き物を元気にさせるのは、どこの国でも共通なのですね。わたしは、確かに北欧は気温も低く、とても寒いイメージが強くありましたが、太陽が長く日中照らす時期は、国をあげての御祝だったことを最近知りました。北欧のお祭りを知って、改めて太陽のありがたさを実感しました。
キャンドルナイトを楽しんだり、またこの時期の食べ物を楽しんだり、こどもへ田植えの話をしたり、、、この時期の恵みを楽しんでください。
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